コラム, 電子カルテ

紙カルテのスキャン作業について

紙カルテ運用の院所が、電子カルテの導入の検討、過去の紙カルテの置き場所に
困ってくると、紙カルテをスキャンしてデータ化したいと考えるようになります。

当社で扱っているシステムは、まさに「カルテスキャン」を行うことに適した製
品となっています。そのため、「どのような手順で行うのか」「費用はどれぐら
いか」「自分たちでできるのか」など、紙カルテのスキャン方法や作業内容につ
いてご質問を頂く事が多くあります。

今回は、実際にスキャン作業された病院・クリニックからいただいた情報などを
元に、できるだけ効果的にカルテをスキャンする方法、そしてその流れについて
ご説明します。

紙カルテをスキャンする事の意義

まず、紙カルテをスキャンしてデータ化する事によって、どのようなメリットがあるでしょうか。

1、カルテを探す時間の軽減

カルテを見たいときに、カルテ庫に取りに行く、探す、の手間が省けます。

目の前にあるパソコンやタブレットで、すぐに見る事ができます。

2、スペース

カルテ庫のスペースを削減できます。

スキャン後、カルテ庫だったスペースに診察室を作ったり、院長室や休憩室として有効利用している例もあります。

また移転や改築の際に、カルテ庫のスペースを削減する場合にも有効です。

3、電子化への一歩

電子カルテ化を目指しているが、紙カルテがあるうちは運用が煩雑になりそう、と二の足を踏んでいるのであれば、電子化への一歩としてカルテのスキャンが有効です。

電子カルテと同じ画面上で過去のカルテを見る事ができれば、電子カルテを導入しても、運用上の煩雑さが軽減されるでしょう。

スキャンを誰が行なうか

紙カルテのスキャンを検討する際に、誰が行うかを決める必要があります。

大きく分けて、①病院・クリニックのスタッフが行う、②専門の業者にお任せする、の2通りの方法があります。

1、クリニックのスタッフが行う

まずは、クリニックでスキャン係を決めてスキャンを行う方法があります。

外注に比べ、コストを大幅に削減することができます。

またカルテという個人情報を扱う関係上、クリニック内で作業を行なう事は、望ましいと言えます。

ただし、クリニックのスタッフは、他の業務との掛け持ちになるので、スキャンの効率が落ちる事が予想されます。

2、専門の業者に依頼する

多少の費用をかけてもスピードを優先したい場合、またクリニック内で作業の時間をとる事ができない場合、専門の業者に依頼する方法があります。

スキャン対象のカルテを段ボールに詰め、カルテのリストと共に引取りにきてもらうと、数週間後にはデータとして納品されます。

保存義務のないカルテでしたら、そのまま廃棄を依頼することも可能です。

業者によっては、保存義務のあるカルテをスキャン後、倉庫に保管するサービスもあるようです。

もちろん個人情報には留意し、その点を記載した契約を結ぶのが望ましいでしょう。

依頼する場合の費用ですが、ある業者によると、カルテ棚1本(幅900mmで5段のタイプ)でおおよそ50万円程になるそうです。

スキャンの際に気をつけておくべき事

スキャンをするときに特に気をつけておくべき事があります。

1、スキャンデータに情報を付与する

せっかく労力や費用をかけ紙カルテをデータ化しても、いざ見るときに探すのが手間になるとストレスになります。

スキャンする際、また依頼をする際にスキャンデータに情報をつけておくと、検索がしやすくなります。

例えば、以下の情報をスキャンしたファイル名に入れておきます。

・患者番号

・いつの分の診療録か

・診療録の種類はなにか(1号紙、2号紙、検査等)

2、スキャンの実施記録を残す

クリニックでスキャンをする場合、スキャンの実施記録を残すべきです。

ひとつは、カルテ保存の法的義務や厚生労働省のガイドラインをしっかり考慮した方法でスキャンすることが必要だからです。詳細はこちらのコラムをご覧ください。

書類を電子カルテにスキャナで取り込む

また、きちんと記録をつけることで、スキャンデータの漏れや抜けを防ぐことができます。

例えば、以下の項目を記載します。

・スキャン実施日と時間

・スキャン実施者

・スキャンしたカルテの患者番号

・1患者のカルテを何枚スキャンしたか

・スキャンした画像を目視で確認したか

業者に依頼する場合も、同様の実施記録の提出を条件にすると良いでしょう。

必要な機材

病院・クリニックでスキャンを行う場合、どのような機材を用意すべきでしょうか。

・裁断機

カルテは本のように糊付けして綴じている場合が多いので、スキャナに通す前に、裁断をする必要があります。

厚みがあるカルテを裁断する場合があるので、押し切り式やスライドカッター式よりも、ギロチン式をおすすめします。

・スキャナ

スキャナは多彩な機種が販売されています。

お奨めは「ADF式スキャナ(まとめて流すようにスキャンするタイプ)」と「フラットベット式スキャナ(フタを開け、パタンとはさむタイプ)」の併用です。

導入事例の多い機種をご紹介します。

PFU fi-7260

また、カルテを裁断せずにスキャンできる機種もあります。

Fujitsu SV600

※1枚ずつページをめくりながらスキャンするので、作業スピードは落ちてしまいます

・パソコン

スキャナを接続するため、またデータをためておく為のパソコンが必要になります。

あらかじめハードディスク容量を計算して、ご用意いただくとよいでしょう。

なお、解像度を240~300dpi に設定してスキャンした場合、1ページあたりの画像サイズは、300~800KB程度となります。

仮に、1患者のカルテを表裏あわせて20ページ(10枚)とし、1ページ500KBとした場合、

20ページ×500KB=10,000KB(およそ10MB) となります。

全患者数が3万人の場合、

10MB×30,000人=300,000MB(300GB)となります。

今は1TB搭載のパソコンが家電量販店でも販売されているので、用意は難しくないかと思います。

万が一に備え、バックアップ用のポータブルハードディスクなどの用意も必要でしょう。

病院・クリニックでスキャンを行う場合の実際の作業

では、実際にどのような作業を行うのでしょうか。

  • 裁断機にて張り付けられたカルテを分離しスキャン

①カルテの背表紙を裁断します。

②カルテの状態を確かめる

当然ですが、スキャナは表面(ひょうめん)しかデータにしてくれません。

カルテに検査用紙などを貼っており、その下に所見などを書いていないでしょうか。

もしそのようになっているのであれば、該当ページの後に、白紙を挟んで検査用紙をそちらに貼り直す必要があります。

③枚数(ページ)を数える

④スキャンする

スキャナは基本的に、ADF(自動原稿送り装置)側でスキャンします。

一度通すと、両面スキャンしてくれます。

うまくスキャンできない場合、例えばカルテの糊が引っかかって、うまくスキャンできない場合は、

フラットベット側でスキャンをする必要があります。

⑤スキャンデータを目視する

紙が折れてスキャンされていないか、スキャンした枚数分データがあるかなどを画面上でチェックします。

⑥画像ファイルに名前を付ける

後で検索しやすいように、患者番号などをつけておくとよいでしょう。

⑦スキャン実施記録を付ける

先に述べたような理由で、スキャン実施記録を残しておく事をお奨め致します。

なお、実際に上記手順で作業すると、1人分のカルテをスキャンするのに、3~10分程度かかっているようです。

(1人がスキャン作業を集中して行った結果、日に100冊ほどをこなしているクリニック様もありました。)

あらかじめスキャンするカルテ数と、スキャン作業に割くことのできる時間を考慮し、計画を立ててみるとよいでしょう。

今回は紙カルテのスキャンについてご案内してきましたが、いかがだったでしょうか。

意外に手間がかかると思われる部分もあったかもしれません。

しかし、手間をかけたぶん、スキャン後には多くのメリットを感じる事ができると思います。

以下が、カルテをスキャンされた医療機関様でのメリットです。

・古いカルテを取りに倉庫まで行かなくてもよくなる

・カルテの紛失、捜索、保管についての心配がなくなる

・感熱紙などの文字が劣化しない

・カルテ置き場だったスペースを他の用途に活用できる

・電子カルテから簡単に過去カルテデータを呼び出せるようになる

・災害時にそなえて、データを安全な場所に置いておくことができる

これから紙カルテのデータ化を検討されている方の参考になると幸いです。

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