コラム, 電子カルテ

書類を電子カルテにスキャナで取り込む

電子カルテを導入しても紙は残る

電子カルテを導入しても完全に紙はなくなりません。たとえば、他院からの診療情報提供書(※1)や患者が書いた紙の問診票(※2)、手術や検査などの患者同意書など、これらの書類は電子カルテが導入されても残るのです。そこで、スキャナで取り込むという方法が一般的に取られています。しかし、いったん取り込んだ書類は廃棄しても良いのでしょうか。多くの人が迷うところでしょう。

※1 地域連携ネットワークなどで共有した場合は、直接電子カルテに取り込める場合もあります。
※2 問診アプリでダイレクトに電子カルテに取り込めるシステムもあります。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

平成29年5月に厚生労働省が公表した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン【第5 版】」に書類をスキャナで取り込んだ際の対応方法が記載されています。

同ガイドラインでは、やむを得ず書類が残ってしまうケースとして、

(1)電子カルテ等の運用において、診療の大部分が電子化された状態で行われている一方、他院から紙やフィルムでの診療情報提供書等の受け入れが避けられない事情がある場合

(2)電子カルテ等の運用を開始し、電子保存を施行したが、施行前の診療録等が紙や

フィルムで残り、一貫した運用ができない場合、及びオーダエントリシステムや医事システムのみの運用であって、紙等の保管に窮している場合

を想定しています。ガイドラインではこういったケースにおけるスキャナで取り込む場合の遵守すべき事項がまとめられています。

スキャンデータは電子署名・タイムスタンプが必要

まず、スキャンする際に最低限守るべき遵守事項としては、

(1)スキャンによる情報量の低下を防ぐこと

業務上に支障が生じることのないよう、スキャンによる情報量の低下を防ぎ、保存義務を満たす情報として必要な情報量を確保するためには、一定の規格・基準を満たすスキャナを用いる必要性が明記されています。また、スキャンを行う前に書類に他の書類が重なって貼り付けられていたり、スキャンした範囲外に情報が存在したりすることで、スキャンによって情報が欠落することがないことを確認することも指摘されています。

(2)一般的な画像情報のデータ形式

また、一般の書類をスキャンした画像情報は、PDFやJPEGなど汎用性の高いデータ形式で管理することが推奨されています。

(3)電子署名・タイムスタンプで責任の所在を明確に

一方、電子カルテの3原則のひとつである「真正性」を担保するために、医療機関等の管理責任者は、①スキャナによる読み取りに係る運用管理規程を定めること②スキャナにより読み取った電子情報と元の文書等から得られる情報と同等であることを担保する情報作成管理者を配置すること③スキャナで読み取った際は、作業責任者が電子署名法に適合した電子署名・タイムスタンプ等を遅滞なく行い、責任を明確にすること、と3点を守ることを求めています。

スキャンをする期限は?

それではスキャンをする期間は、どれくらいの期間が認められているのでしょうか。その都度スキャンし電子カルテに取り込む場合のケースとして、「改ざんを防止するため情報が作成されてから、又は情報を入手してから一定期間以内にスキャンを行うこと」とされています。この一定期間とは、具体的には改ざんの動機が生じないと考えられる「1~2 日程度以内」の運用管理規程で定めた期間で、遅滞なくスキャンを行わなければならないとしています。何らかの事情でやむを得ず遅滞する場合は、スキャンが可能になった時点で遅滞なく行うこととしています。

過去カルテをスキャンする場合は?

一方、紙カルテなど過去に蓄積された紙媒体等をスキャナ等で電子化保存する場合については、厳格なルールが定められています。

  • 患者への掲示等による周知
  • 実施計画書の作成(※)
  • 医療機関等の保有するスキャナ等で電子化を行う場合の監査をシステム監査技術者やCertified Information Systems Auditor(ISACA 認定)等の適切な能力を持つ外部監査人によって行うこと。
※運用管理規定の作成と妥当性の評価、作業責任者の特定、患者等への周知の手段と異議の申立てに対する対応、相互監視を含む実施の体制、実施記録の作成と記録項目、事後の監査人の選定と監査項目、スキャン等で電子化を行ってから紙やフィルムの破棄までの期間、及び破棄の方法など

と規定しています。

また、外部事業者に委託する場合は、要件を満たすことができる適切な事業者を選定する必要があり、適切な事業者とみなすためには、少なくとも「プライバシーマーク」を取得しており、過去に情報の安全管理や個人情報保護上の問題を起こしていない事業者であることを確認する必要があるとしています。

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