医療現場においてシステム導入を検討する場合、「電子保存の三原則」の担保がなされているか確認する必要があります。
とはいえ、システムを提供しているメーカーからすると、システム構築の上で「電子保存の三原則」は基本中の基本なので、特段詳しい説明を行わない場合も想定されます。
しかし、医療機関の情報システム部門としては知らないでは済まされませんので、きちんと理解をしておく必要があります。
では、「電子保存の三原則」は、システムを運用する中でどのように関わってくるか、少しご説明したいと思います。
電子保存の三原則はどこに書かれている?
そもそも「電子保存の三原則」は、どこに記載されているのでしょうか。
厚生労働省が医療情報システムの決まりを定めた、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(2018/10時点では第5版)の7章「電子保存の要求事項について」明記されています。
次の3つが「電子保存の三原則」です。
・真正性の確保
・見読性の確保
・保存性の確保
診療の記録を電子的に(パソコンなどに)保存する場合、上記3つの要求事項を満たしていなければなりません。
対象ですが、電子カルテはもちろん、レセプトコンピュータ、画像ファイリングシステムなども“医療情報システム“に含まれます。
「真正性の確保」とは
こちらに関わるガイドラインの原文は、以下です。
「電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中における当該事項の改変又は消去の事実の有無及びその内容を確認することができる措置を講じ、かつ、当該電磁的記録の作成に係る責任の所在を明らかにしていること。」
簡単にいうと、他の患者さんと間違えて記録しないように、間違えて消えてしまわないように、ということがシステムに求められています。
また、誰が書いたか、いつ変更・修正したか、をわかるようにしておきなさい、ということになります。
電子カルテを例にすると、患者さんのカルテがいつのカルテか、誰が記載(入力)したか、変更が加えられているのであればいつか、という事がわかるようになっているはずです。
システムを使用するときにログインする必要があるのは、この為です。
また、システムの不具合による誤動作を防ぐ意味で、最新のバージョンにアップデートする事もとても重要な事と言えます。
「見読性の確保」とは
ガイドラインの原文は以下です。
「必要に応じ電磁的記録に記録された事項を出力することにより、直ちに明瞭かつ整然とした形式で使用に係る電子計算機その他の機器に表示し、及び書面を作成できるようにすること。」
パソコンなどで、すぐにわかりやすい状態で閲覧できること、が条件になります。
また、カルテの内容を印刷できるようにしておきなさい、という事も付け加えられています。
カルテは様々な場面で見る、見せる、が必要になります。
診療で自分たちが見るのはもちろん、患者さんへの説明のために見せる場面もあるでしょう。
また、医療監査、医療訴訟の要求に応じ、印刷をする必要があるかもしれません。
そういった条件をシステムは満たしているか、今一度確認することが必要です。
もう少しいうと、データをためたサーバーや院内のネットワークの障害時に、代わりの方法でカルテを閲覧できるように準備することも、すすめられています。
保存性の確保
こちらに関しての原文は以下です。
「電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中において復元可能な状態で保存することができる措置を講じていること。」
カルテの保存期間である、“最終来院日から5年”はカルテを閲覧できる状態になっているか、が条件となっています。
またもしもの為に、バックアップがとれているか、という点も考慮すべきです。
ウイルスソフトによるデータの破壊や、サーバーの経年劣化にも対策が必要です。
まとめ
「電子保存の三原則」は、言われてみれば当たり前な事ばかりです。
大切な患者さんのデータをためておくシステムなのですから。
今回は大まかな内容について触れましたが、他にも気を付けるべきこと、留意すべきことが、ガイドラインまた解説書に記されていますので、一度読んでみるのはいかがでしょうか。
■厚生労働省のページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000166275.html
・医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版 本文
・医療情報システムを安全に管理するために(第2版)
・「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」に関するQ&A