コラム, 電子カルテ

電子カルテの導入効果は工夫次第

IT化に期待する効果

電子カルテが生まれて、約20年が経ちました。大病院のほとんどが導入され、診療所でも4割を超えています。普及が進むことで、電子カルテ導入の意味や効果を改めて考える必要があると感じます。近年、電子カルテを導入した医師から「電子カルテをもっと活用したい」という相談を多く受けます。「導入したものの、うまく使いこなせていないのでは」と考えているようです。どうすれば、導入効果を最大限発揮できるのか? 今回はその点について考えてみます。

一般的に、IT化に期待される効果は、「距離」「場所」「時間」の制約を取り除くことにあるといわれます。上記3点について、電子カルテ導入による効果を考えてみましょう。

距離の制約

まず、距離の制約を取り除く観点から考えると、電子カルテを導入すると、医療機関内でのカルテの移動が瞬時に行えるようになります。また、パソコンさえあれば診察室や検査室、処置室など場所を問わず、カルテを閲覧したり、入力したりできます。さらに在宅医療の現場では、ネットワークに接続していれば患者宅などの院外でもカルテの閲覧や入力が可能になります。加えて、在宅医療で必要不可欠とされる「多職種多業種間の情報共有」にも効果的だと言えます。今後、クラウドの電子カルテが普及するにつれて、パソコンがネットにつながっていれば、どこでもカルテを入力・閲覧できる効果は高まっていくことでしょう。

場所の制約

次に、場所の制約を取り除くことについては、電子カルテを導入すると、カルテ保管庫が不要になります。

新規開業のクリニックであれば、最初からカルテ保管庫のスペースを設けない場合もあります。最近、都心部では「カルテ庫のスペースが取れないから、電子カルテを導入したい」という声も多く出ています。

また、既存の診療所は、過去のカルテに保存義務がある関係から、すぐにカルテを廃棄することはできません。既存診療所の場合は、電子カルテ導入以降はカルテが増えなくなり、徐々にカルテ保管庫が減っていくことになります。

時間の制約

最後に、時間の制約を取り除くことについて考えてみましょう。受付や会計に要する時間が短縮されることで患者だけではなく、受付スタッフも導入効果を実感できます。例えば、カルテをカルテ棚から探したり、外注検査の結果をカルテに貼ったり、患者さんが持ち込んだ紹介状をカルテに貼る、などの作業がなくなります。

また、会計時にはカルテを見ながらレセコンに打ち込む作業が不要となり、レセプトチェック機能を活用することでレセプト点検業務の大幅な効率化が図れます。診療所全体のカルテに関する業務の大幅な時間短縮になるのです。

IT化によってもたらされる効果

電子カルテを使いこなせるように工夫しているか?

電子カルテを導入した医師から「電子カルテを使い始めたら、紙カルテには戻れない」という声を聞きます。一方で「電子カルテは入力が面倒だから紙カルテに戻りたい」という意見もあります。実際の現場で確認すると、こうした評価の違いを「ああ、なるほど」と感じます。それは「電子カルテをより使いこなせるように工夫しているかどうか」にあるようです。

(1)パソコン操作が苦手な医師は、多様なデバイスの検討を

パソコン操作が苦手な医師にとって、電子カルテのキーボードやマウスによる入力操作に慣れるのは難しく、そうした医師からは「紙カルテと同じ操作性で入力したい」という声が出ています。そこで生まれたのが、ペンタブレットやタッチパネルなどの入力形式を取る電子カルテです。これらを採用すれば、キーボードやマウスによる入力操作から解放されます。また、現在の音声入力ソフトは認識機能や医療辞書の機能が著しく向上しており、その活用を見直す声も出てきています。

(2)タブレット端末を活用すれば効率化が図れる

診療現場では「○○しながらカルテに記載する」というケースが多く見受けられます。そこで有効なのが、スマートフォンやタブレット端末の活用です。現在広く普及しているこれらの端末は、直感的な操作を実現しています。また、持ち運びが簡単です。さらに、患者自身が問診入力する際にも利用されるなど、医師や看護師などの業務負荷の軽減や診療の効率化にも役立っています。

(3)電子カルテと比較して紙媒体の利便性が高ければ、残しても問題ない

電子カルテを導入しても、紙媒体で保存する必要がある書類もあります。例えば、付せんに書いたメモや患者の同意書、他院からの紹介状、検査結果などが挙げられます。長期保存を必要としないものは、紙のまま残しておいても構いません。一方、長期的に保存する必要があれば、スキャナに取り込んで電子データに変換することをお勧めしています。それにより、電子カルテにひも付けることもできるからです。最近はスキャナの性能が向上して低価格が進んでいます。医療現場のさまざまな場面でスキャナは活用されています。

電子カルテ書類の取り込み

IT化で「楽」にならなきゃ、単に振り回されるだけ!?

医療ITに期待する効果として、もう1つ重要なのが「業務が楽になる」というキーワードです。例えば、「カルテ作成が楽になった」「診断書や紹介状の作成が楽になった」ことがあれば、導入効果をすぐに実感できるでしょう。IT化しても楽にならなければ、結局はITに振り回されて疲弊するだけではないでしょうか。医療のIT化を考える際には「IT化することで、本当に楽になるのだろうか」という視点を持って取り組んでいただければと思います。

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